運命的な出会い

　大分の現場から実況中　『屋外にリビングのある家』

[ohnari:175]　運命的な出会い

運乗さん、

朝日が当たっている正面はきれいですね。
そとん壁（白）を塗った状態が想像できます。

大成先生、

浴室に関しては、新しい試みができたことに感謝しています。
現代の住宅は、左官の工事が減って新建材の工事が増えました。
建築的に言うなら、湿式工法から乾式工法への移行です。

浴室もかつての左官工事からシステムバスに代わりました。
その主な理由は、メンテナンスが楽、ということでしょうか。
あるいは金額が安い、ということもあるかもしれません。

そこで、大成邸の浴室ですが、
当初の設計通り床と壁をタイルで仕上げていたら、
奥さまとお嬢様から、「やっぱりシステムバスが良かったわ」と、
言われていたかもしれません。

奥さまから「目地のないもの」と難しい課題を与えられたのですが、
今となれば結果的に大正解だったと思います。
奥さまのアーティスト（音楽家）的な感性・直観が導いたと思います。

システムバスには、壁パネルのジョイント部がありますが、
大成邸の浴室の壁は完全に一体物で、目地がありません。

システムバスは、パネルのジョイント部をパッキンやコーキングで防水しており、
やがて劣化による漏水も考えられますが、
大成邸の浴室は、床も壁も完全に一体物で包み込んだＦＲＰ防水です。

システムバスは、やがてパネルの劣化や腐食が生じますが、
大成邸の浴室は極めて耐久性が高く腐食に強い材料です。

こうして性能面とメンテナンス面で比較すると、
システムバスより大成邸の浴室の方が断然勝っています。

では、金額面を比較してみます。
システムバスは、1坪タイプで40万円～50万円（工事費込み）。
1.25坪タイプだと70万円～80万円がよく使われています。

大成邸の浴室は1.5坪の広さですが、躯体がそのまま壁なので、
（システムバスは躯体と壁パネルの間に５センチ程度の隙間がある）
システムバスだと2坪タイプの広さに相当します。
2坪タイプのシステムバスはありませんから、特注になります。
価格は一気に跳ね上がり、200万円くらいになると思います。

さて、大成邸の浴室の金額は以下のようになりました。（税込）

１．ＦＲＰ防水+ポリエステル樹脂+トップコート塗布　220,000円
２．東リ・バスナフローレ貼り　38,500円
３．据え置き型の浴槽（金額は大成先生だけが知っています）

合計、258,500円+据え置き型の浴槽

どうですか。
私は価格面でも大成邸の浴室の方が断然勝っていると思います。

ＦＲＰ防水専門の藤原光さんの会社（杵築）を訪問したとき、
「住宅の浴室をこのように仕上げるのは初めてで、これまでは
大きな施設ばかりだった」というのがとても不思議でした。

比較するとこれだけ優位性があるにもかかわらず、
ほとんどの住宅建築でシステムバスがもてはやされています。

同じように、室内の壁はビニルクロスがもてはやされていますが、
大成邸はホタテの貝殻を焼成してつくった左官の壁にしました。

また同じように、外壁は窯業系のサイディングがもてはやされていますが、
大成邸は鹿児島の火山灰（シラスバルーン）が主原料のそとん壁です。

いずれにしても、建築家の私としてはとても大きな発見でした。
建物のコンセプトといい、遠隔地でのオープンシステムといい、
浴室の仕上げといい、その他いろいろ考え合わせると、
大成先生と私は必然的（運命的）な出会いなのかと思います。

また、それぞれの工事の人たちとも必然的な出会いを感じます。
運乗さんはじめ、どの業者の人たちも本当に良い人が集まりました。
みなさんがあって、大成邸の工事が進んでいるのは厳然たる事実です。

実際、この内容でこの金額は驚異的です。
一括請負の工務店やハウスメーカーではけっしてできません。
（業者のみなさんは全体の金額を知らないでしょうけど）

しかも、どの業者も損をしていません。（と思います）
私も建築業界独特の値切りの交渉を一切しませんでした。
みなさんから提示された金額をほぼそのまま認めています。
（もちろん、比較検討して選ばれなかった業者もありますが）

なので、お礼を言います。
大成先生、みなさん、本当にありがとうございます。
建築家として、とてもいい経験をさせていただいています。
工事が無事完成するまで、どうかよろしくお願いします。

山中省吾