2k+2dk=1ldk
2Kと2DKを合体して⇒1LDKに
ゆったりとした事務所兼住居になりました。
赤ん坊がハイハイして家中追いかけ回るんです。
狭く仕切られた部屋が、
広々としたリビングと可変性のある寝室へと大変身しました。
しかし、築36年の古い共同住宅の大改造には
住んでみなければ分からない思わぬ結果も……。
2Kと2DKを合体した家/鹿児島市
■設計監理/Kuプラン/倉内博(くらうちひろし)
■写真提供/Kuプラン
■取材・記事/山中省吾(やまなかしょうご)
建築士の倉内さんに案内され、着いたところは、ちょっと洒落た「通り」。
周囲はマンションや商店がゴミゴミと建ち並んでいましたが、
その通りだけは、陽だまりのような温かさがありました。
鹿児島市の松原町と樋ノ口町の境、大通りから少し中に入った小さな通りでした。
僅か数十メールの小さな通りにもかかわらず、
植栽で仕切られたレンガ敷きの中央分離帯(歩道)が。
元々そんなに広くない道路に中央分離帯を設けたのでしょう。
車道として残った部分は、車がやっと通れるくらいの幅です。
でも、なんかいいんですよね。
ゴミゴミとした街の中にある、植栽とレンガ敷きの細長い島が。
この通りに面して、小さな共同住宅が建っていました。
正面の壁はレンガ敷きの歩道と同じ色調のタイル貼り、各階に丸い窓が切ってあります。
通りから見て右側に屋外階段、左側と奥に住戸が一つずつ配置された
3階建て(計6戸)の小さな共同住宅です。
「3階の部分をリフォームしたんです。手前の2Kを事務所に、奥の2DKを住居に使っていたのですが、二つを合体して事務所兼住居に改造したんです」と、設計監理を手掛けた倉内さん。
「自宅と事務所が別々のときはけっこう不便でした。今はとても快適です。同じ面積なのに、広くなった気がします」と、奥さま。
事務所兼住居と聞いていたのに、事務所らしいスペースがどこにもありません。「ここが事務スペースなんです」と、教えていただいたのは、リビングにあるL字型の長いカウンターでした。高さ60センチ、長さが約8メートルもあります。カウンターの一角にはテレビ、下には事務用品の収納スペースも。
このカウンター兼収納家具は、どう見てもこのリビングのために特注した家具にしか見えません。リビングの雰囲気をこのカウンターが高めています。事務所の気配をまったく出さないところがいいですね。
寝室と子供室も仕切りのない広いワンルームです。子どもの成長に合わせて仕切れるように考えてあります。クローゼットや本棚が効果的に配置してあるので、広々としたもう一つのリビング、といった感じです。リフォーム前の段差だらけの状態に比べて、全体の動線がとてもシンプルになりました。
「下の子が家中ハイハイして私を追いかけて回るんです」と、奥さま。
「リフォーム後、始めての冬を過ごしたのですが、以前に比べて部屋の中がとても暖かいんですよ。でもね、一つだけ不具合が……。」
結露が発生したのです。部分的ですけど。キッチンと洗面の窓ガラスに。それと、今は使っていないもう一つの玄関ドアにも。
洗面室 クローゼット(奥に白い玄関ドア)
3階の屋根部分に断熱材を入れ、リビングの窓を2重サッシにしたことで、家全体の断熱性能が格段に増しました。そこで、リフォーム前は室温があまり高くならず結露が生じなかった部分でも、リフォーム後は部屋全体が暖かくなったので、2重サッシにしていない窓ガラスや鉄製の玄関ドアの部分に結露が生じるようになったのです。
設計監理者の倉内さんにも予測できませんでした。「すぐ専門業者を交えて検討します。夏のうちに対策を施して、次の冬で結果を検証してみましょう」と、倉内さん。
「オープンシステムだったから、よかったのだと思います。倉内さんの知識と私の構想に、いい相乗効果が生まれたと思います。実際、私の思い描いていたことはほとんど実現しました。間取りを考えたり、仕上げ材料を選んだり、設計に参加できたので、楽しかったです。結果にはとても満足していますよ」と、奥さま。
そして、「窓の結露も、けっして不満ではないのですよ。家の性能がよくなって生じたことですから。誰にも予測できないことです」と、優しい心づかいの奥さまでした。
2Kと2DKを合体した家/鹿児島市
■設計監理/Kuプラン/倉内博(くらうちひろし)
■写真提供/Kuプラン
■取材・記事/山中省吾(やまなかしょうご)
改造前の写真です。
玄関を入ってすぐの廊下にキッチンが。狭っ!
事務所のあった部屋です。ごみごみしていました。
以前のリビング。赤ん坊はハイハイできません。