建築家と建てる贅沢な注文住宅 - オープンシステム

福岡県/創建工房

分離発注 疑似体験

顔が見え 価格が見え
品質が見えた 家づくり




画像の説明



100年後のゆとりを
実感できるSさんの家

DATA
建築場所/福岡県鞍手郡
家族構成/夫婦+子供2人
敷地面積/304.13㎡(申請部分)
延床面積/99.37㎡
構造/木造軸組み工法(平屋建て)
屋根/陶器和瓦葺き
軒先部分 ガルバリウム鋼板平葺き
外壁/漆喰塗タテ櫛目引き
腰壁部分 焼き杉板張り
断熱/アイシネン(吹き付け発砲断熱)
竣工/2007年5月

■設計監理/創建工房一級建築士事務所/黒土敏彦/福岡県糸田町
■撮影/ティエムフォート
■取材・記事/山中省吾



画像の説明  画像の説明




設計料が○百万円だなんて、詐欺だ! 絶対に騙されている!
そんな時、工事に先行して納屋を解体した。
よかれと思ってしたことが……。
ああ、最悪のタイミング。建築士、大ピンチ!

建て主と建築士は、元請け業者を介さず、直に専門業者へ発注する方式を試みた。
ところがそこに、工務店も参戦。値引きは、な、なんと300万円。
家計簿は凄い。と言うより、奥さまが凄い。
見積書には記載されないけれど、家づくりにはいろんな出費を伴う。
家計簿から抜き出した貴重なデータは、これから家をつくる人、必見。
薪ストーブの導入をマジで悩み、騙されそうになったご主人。
奥さまが考えて建築士が具体化した収納の工夫……。

いろいろあったけれど、顔が見え、価格が見え、品質が見えた。
そして100年後のゆとりを実感できる家ができた。




画像の説明



設計料が300万円だなんて、詐欺だ! 絶対に騙されている!

何十冊も建築の本を読んだ。住宅見学会にも足を運んだ。インターネットでも調べた。勉強会にも参加した。研究に研究を重ねた。そして、夫婦で納得して契約した―――つもりである。

だが、周囲はほっとかなかった。
「設計料が300万円だなんて、ふざけている。詐欺だ。絶対に騙されている」
「知りあいの大工さんは、工事をさせてもらえるなら設計料はいらないと言っているわ」

何しろここは、何十年ぶりに新築の家が建つという集落である。そもそも「設計」や「監理」の概念がない。いや、大都会だって同じだ。住宅の設計・監理に300万円と聞けば、たまげるかもしれない。

しかし、設計・監理にもいろいろある。確認申請に毛が生えた程度の設計・監理なら、詐欺だ。工事をすべて工務店に任せるなら、ぼったくりだ。

創建工房一級建築士事務所の黒土敏彦さんは違った。建築士としての作業量がべらぼうに多いのだ。もちろんその分、建築主の得るものもべらぼうに大きいのであるが、それに気が付く人は、まだまだ少数派かもしれない。

一体、どこが違うのか。始めて聞く人は驚くが、よく考えてみれば当たり前のことに思えてくる。




画像の説明  画像の説明



先行して納屋を解体 ああ、最悪のタイミング 建築士、大ピンチ!

集落と田圃を区切る一本の道。南側に田圃、北側に集落。どの家もすぐ裏は山であり、田圃の向こうにも里山が見える。ここに着いたとき、蛍の里を思い浮かべた。聞けば、やはり昔は、このあたり一面に蛍が飛び交っていたらしい。


画像の説明




Sさんの家は、母親の実家の一角に建った。母屋があり納屋があり、作業小屋がある。この集落は、どの家も敷地が広い。建築士の黒土さんは、敷地の状況を調査した。調査といっても、まずは目視である。この時点で最も重要なのは地盤の強度を確認することだ。

黒土さんの目は、小さな変化も見逃さない。納屋や作業小屋の基礎のあたりが、微妙に波打っていた。塀も波打っていた。

ヤバイ。Sさんの家は、納屋を解体した跡地に建てる予定だ。だいじょうぶか? 地盤改良が必要かな? あるいは杭?

そこでSさんに提案した。まずは、地盤調査をしよう。結果次第で基礎の設計が変わる。思った通り、軟弱地盤だった。住宅では珍しいかもしれないが、鋼管杭を打つ基礎の設計にした。

それからSさんの了解を得て、納屋を解体した。ずいぶん古い納屋でもあるし、もう使っていないから、あまり重大なこととは思わなかった。ところが、エライことになった。大事件勃発である!


画像の説明
解体した納屋。「お父さんから一喝されてビビリました。
これで終わったと思いました」と、建築士の黒土さん。




もしかしたら、あの建築士に息子は騙されているかもしれん、と疑われていた時に納屋が解体された。よかれと思ってしたけれど、最悪のタイミングだった。

「ビビリました。これで終わったと思いました」と、黒土さん。
 登記上、納屋の所有権はおばあちゃんになっていた。そのおばあちゃんは、入院中だった。ちゃんと相続ができないままに解体して、問題は起きないか、ということをお父さんは心配したのだ。

「もし、問題が起きたら、お前は、解体した納屋を元に戻せ!」
建築士、大ピンチ。あまりにうろたえる黒土さんの姿に、きっとお父さんは、「正直者」を見たのだろう。助け舟を出した。

「あんたの知り合いに、司法書士や土地家屋調査士がおるやろが。相談してみちょってくれんか」

さて、相談の結果は? 運よく何の問題もなかった。滅失登記に支障はなく、黒土さんは胸を撫で下ろした。




画像の説明
おばあちゃんの敷地内に現存している納屋。
古く朽ちているが、1階部分を赤レンガでつくっているところが珍しい。
なんとなく、進取の気風と文化的な豊かさを感じさせる納屋だ。



「いまはやめといた方がいい」 というFPの助言に、びっくり!

建築士の黒土さんは、家づくりにはFP(ファイナンシャル・プランナー)が参加した方がいいと思っていた。だが、住宅に詳しいFPは、業者のひも付きが多い。それでは困る。だれかいい人いないかな。

FPの鶴さんと出会ったのはそんな時だった。
「建てない方がいいと判断したら、そのまま建て主に言うけど、それでもいいですか」と、鶴さんが訊いた。

「家をつくることで不幸になるなら、家などつくらない方がいい。ありのままに伝えるべきだ」と、黒土さん。

二人が出会ったときの最初の会話がこれである。建築士の黒土さんもFPの鶴さんも、馬鹿がつくほど正直者だった。


画像の説明
取材の知らせを聞いて、駆けつけてきたFPの鶴さん。奥さまと「GOサインの企画書」を見て、あの頃を振り返る。「何年後に、月々の生活費はこれだけ、と鶴さんが数字で示してくださったことで、すごく安心しました。ここまで使っても大丈夫と、数字で把握できないと不安なんです。私は、どうもそういう性格なんです」と奥さま。




「びっくりしました。だって、今はまだやめといた方がいいと、鶴さんが言うものですから」と、奥さま。

Sさん夫妻は、住宅会社の展示場にも足を運び、いろいろ比較検討していた。どこの住宅会社も、Sさんの収入ならいくらでも住宅ローンが組めるからと、なるべく早い時期の決断を促してきた。

ところが、鶴さんだけは違った。やめといた方がいと言うのである。鶴さんは、今の状態で土地と建物の両方に費やした場合、Sさんの家計がどう推移するか分析してみた。すると、最も教育費のかかる時期、資金不足が予測された。それで「NGサイン」を出したのだ。

「それまでは土地も購入しようとしていたのですが、子供の教育費にお金がかかる一時期、かなり無理が生じることが分かりました。鶴さんのNGサインで、冷静に再検討することができました」と、Sさん夫妻。

おばあちゃんの土地に建てることを決めたのは、そういう経緯があったからだ。



画像の説明

建てない方がいいと判断したら
そのまま建て主に言うけど
それでもいいですか?
(FPの鶴さん)









画像の説明

家をつくることで
不幸になるなら、
家などつくらない方がいい
(建築士の黒土さん)







斬新なボックス型から、景観に配慮した和風に

鶴さんのNGサインから半年も経っていたので、Sさんから連絡をもらった黒土さんは驚いた。この半年の間、Sさん夫妻は、家づくりの研究を重ねながら「安心できる資金計画」を詰めていたのである。さあ、いよいよ設計開始だ。

Sさん夫妻は、建築士に斬新なデザインの家を頼むつもりだったが、建築予定地は「蛍の里」。ボックス型の斬新なデザインだと、浮いてしまうかもしれない。

建築士の黒土さんとも建設予定地に立って完成した建物を想像してみた。そして結論を出した。やっぱりここには、和風の住宅がしっくりくる。


画像の説明

これまでしっかり勉強してきたSさん夫妻。機能や性能面での基本方針は、ある程度固まっていた。



Sさん夫妻の基本方針

《外部》
・景観に配慮。すっきりとした和風のデザイン。
・屋根、外壁は耐候性のいい材料。

《内部》
・家族が集まる「食事」「団欒」の広いスペースを中心とした間取り。
・中心のスペースは天井を高く。
・20年後、30年後の生活を想定し、将来にわたり無駄なスペースを生じさせない。
・外観と調和した内装。
・自由性の高い畳敷きの部屋。
・既存の家具を部屋内に置かない。
・家事の負担を軽減。子供が小学校に行くころ、奥さまは再び働く予定。
・デッキを設けるなど、外と内との連続性を高める。
・外部からの視線の遮断。プライバシーの確保。
・大黒柱を設けたい。

《その他》
・外部も内部もできる限り自然素材を使う。
・高気密、高断熱。結露を少なく。
・オール電化。



奥さまが考えて 建築士が具体化した 収納の工夫

基本設計の時、収納計画をたてるにあたり、建築士の黒土さんは自らの引越しの経験を踏まえて、家具・物品を
①絶対にいるもの
②いるか、いらないか悩むもの
③いらないもの
の3種類に分類することをアドバイスした。

分類の結果をうけ、建築士の黒土さんは、新居に持ち込む全ての家具・家電等の大きさや電気容量を調べ、納戸の広さ等を決める根拠とした。

また、平面図に家具等の位置を書き入れた。家具・家電の位置を設計時にあらかじめ決めることにより、詳細設計時に、スイッチやコンセントの位置や必要個数を効率よく決めることが出来た。


画像の説明  画像の説明
奥さま手描きの図面(脱衣室の収納)と出来上がった造り付け家具




奥さまは、衣類や小物をどこにどのように収納するかを考え、整理したうえで、自ら手書きの図面を5枚も描いた。奥さまの図面を基に、建築士の黒土さんが細部を詰め、設計図に書きこんだ。


画像の説明
奥さま手描きの図面。衣類の種類ごとに細かく描きこまれている。


画像の説明
脱衣室から分離させた洗面コーナー。
脱衣室と洗面室が同じだと、ちょっと不便なこともあるので。

造り付けの下足入や収納棚の材料は建材店から直接購入、本体は大工に組み立てをお願いし、引出しや扉部分は建具職人に製作を依頼した。こうした、依頼方法がとれるのも分離発注の特色のひとつである。

建築士の黒土さんが、引越し後Sさんの家を訪ねてみたとき、設計の時に奥さまが分類したとおりに収納されているのを目にし、おもわず奥さまに「予定通りですね!」と声をかけた。


画像の説明
扉を開いた状態の玄関ホールの収納


画像の説明
完成して1年以上経った。
玄関ホールや脱衣室の収納は、特に上手くいったと満足している。 



納得するまで検討した 四角形とH型のプラン

アプローチには、解体した納屋から出てきたみかげ石を配置した。ちょっと風情がある。和瓦の緩い勾配の切妻屋根の軒先は、ガルバリウム鋼板でアクセントを付けていた。外壁は、漆喰塗り。定規を使わない櫛目仕上げは、自然で素朴な感じが強く出ている。そして腰壁の部分は焼き杉。


画像の説明  画像の説明


ご主人が出てこられ、中へ招じ入れられた。玄関、ホール、和室は、外からの連続性を持たせるため、漆喰塗り櫛目引きだ。他は、貝殻漆喰仕塗装仕上げとしている。床は杉板張り。ほっとする。ここにいるだけで癒される。そんな感じの家である。


画像の説明




この家ができるまで、どのような格闘があったのか。さっそく聞いた。

―――設計にどれくらいの期間がかかりましたか?

プランを決めるまでに2ヶ月間、実施設計に正味2ヶ月間。設計期間は計4ヶ月間でした。

―――プランは、何種類つくりましたか?

大きく分けると2種類です。四角でシンプルなパターンと、H型のパターンです。四角なパターンで十分納得していたのですが、後悔したくないので敢えてH型のプランも追及してみました。


画像の説明   画像の説明


平面に凹凸があるほど工事費は高くなる、ということを概算で確認し、納得した上でシンプルなパターンに決めました。




画像の説明
リビングが見渡せる小屋裏部屋。
ハシゴで上る小屋裏部屋は冒険心をそそるのか、わくわくする。
「子どもが大きくなったら占領されますね」と訊いたら
「いや、ここは絶対に明け渡さない」とご主人。


画像の説明




前半はここで終わります。
後編は主に資料編です。
家づくりに必要な費用を記録した家計簿や光熱費など
貴重な資料が盛りだくさんです。

あなたは後編も見ますか? ⇒ 『後編を見る』

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional